小説のブログ記事
ささやかな祝杯
幾度も繰り返し経験して慣れっこになっているとしても、決して、快の感情は湧いてこないことがある。 またか。 晴美は思わず舌打ちしたくなったが、辛うじて気付かれない程度の溜息をするだけに留めて置いた。 このチャンミ(ばら)アパートという古臭いネーミングの団地の隣家に住む幼稚園児のイエリンに、 ... 続きをみる
錆びた釘 2
「じゃあ、先生、お願いします」 理沙は2歳の息子に手を振る。 一年前、保育園に通い始めたばかりのころは、毎朝むせるほど大泣きしていたのだが、今では、手を振り返すこともなく、仲良しの子のほうへ走っていくことのほうが多い。 以前出産まで働いていた会社は家からかなり遠かったのと、育児休暇をとれるような環... 続きをみる
錆びた釘
音は聞こえているのに、意味が理解できないという状態を、理沙は初めて経験していた。 警察からの電話。 夫が、どうしたって言ったんだろうか。 耳に入る言葉は、ただ音になるばかりで、意味を成さない。 即座に頭に浮かんだのは、夫がどこかの駅で倒れている映像。 胸の鼓動が激しくなり、指先が震える。 どのくら... 続きをみる
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