ふーみんの無限世界

エッセイ、詩、小説の可能性を信じて

恋文

生涯で一度だけ恋文を渡したことがあります。
もう30年以上も前のこと。
16歳年上の男性を好きになってしまいました。
散々あきらめようとしましたが、だめでした。
渡さないつもりで、心の赴くままに手紙を書きました。
彼には受け入れてもらえないことはわかっていましたから。
それでも私はどうしても気持ちを伝えたくなりました。
ふられることを百も承知で、手紙を渡すことを選びました。
それは、私が彼の生徒ではなくなった日。
卒業の日でした。
彼は手紙を読んでから一度会ってくれました。
お前が俺を避けるようになってたのは、わかってたけど、なぜかわからなかった。手紙を読んでお前の気持ちはよくわかった。
気持ちは嬉しいが、俺はお前の気持ちには答えられそうもない。
そう言って、彼はちゃんと私を失恋させてくれました。
その一年後、彼は同郷の幼馴染と結婚したと風の便りに聞きました。
あの手紙の内容はもう思い出せませんが、きっと今読んだら、顔から火が出そうなほど恥ずかしいのではないかと思います。
でも、後悔はしていません。
若くて無知で不器用で内気な私が、まっすぐに気持ちをぶつけることのできた最初で最後の人でした。
あの恋文は少しは彼の心をゆさぶったのでしょうか。
ほろ苦い思い出です。