ふーみんの無限世界

エッセイ、詩、小説の可能性を信じて

今は亡き初恋の人

初恋の人には、ずっと会っていませんでした。
それでいいと思っていました。
どこかで、いいおじちゃんになって暮らしていればそれでいいと。


時々はなにかの拍子に思い出すことはありました。
彼に少し似てる俳優を見たり、思い出の歌がふと耳に入った時など。


数年前、偶然彼が亡くなったことを知りました。
悲しいというのとも違う。
どんな言葉を当てはめればふさわしいのかわかりませんが、大事にしていた過去の一部が別の世界へ旅立ってしまった喪失感のようなもの。


もうこの世のどこにも彼は存在しないということが、なんとなく拠り所の一つを失ったような気持ちになるのです。


今でも鮮やかに思い出せる彼の姿だったり、声だったりは、私の知っている中学生の時のもので、大人になってからのことは一切知りません。


それでもやっぱり、どこかで生きていて欲しかったのです。


時が戻らないこと。
そんな当たり前のことを、彼のことをふと思い出す瞬間に、認識させられる気がして、切なくなります。


大切な人、大切な時間、大切な出来事。
全てどこかに流れ去ってしまうけれど、一つ一つ大事にしたいと思うのです。