ふーみんの無限世界

エッセイ、詩、小説の可能性を信じて

仲良きことは

長年連れ添ったカップルは、似た雰囲気を醸し出していることがあります。
外見だったり、性格や考え方も似てくることがあったりします。
少し前の新聞記事で、なかなか興味深いことが出ていました。


男女二人の皮膚の表面にいる微生物を調べれば、同棲中なのかをおよそ9割の確率であてることができる、というものです。カナダの研究チームがアメリカの微生物学会の専門誌で発表したものです。


人間の皮膚には多くの微生物がいますが、それらの組み合わせは個人の体の部分によって少しずつ異なることがわかったのですが、これを調べることで、同棲中かどうかわかるというのです。


もともとは血のつながりのある家族ではないのですから、遺伝的なものはかなり違うはずです。一緒に暮らしているうちに似てくるものなのですね。


食べるものや、住んでいる環境が一緒なのだから、ある意味当たり前かなとも思いますが、なんだかその記事を読んでほっこりしました。
ちょっとうらやましいなあ、と。
仲良きことは美しきかな。(by武者小路実篤)

ゆっくりの歩み

私の息子は
ゆっくり成長します


なにが辛いのか
時々悲しそうに泣いて


歯を食いしばり
着ている服を引きちぎり
頭を壁に打ちつけます


毎日話しかけますが
返事はなかなかしてもらえません


靴の履き方も
多くの子供たちの
数十倍も時間をかけて
習得しました


椅子に腰かけていられる時間も
少しづつ少しづつ
長くなっていきました


たいへんゆっくり成長する息子ですが
時々とても幸せな瞬間をくれます


生まれて初めて歌を歌ったとき


真似して体操ができたとき


お掃除のお手伝いができたとき


箸が使えるようになったとき


どれもたいへん待ち望んでいた瞬間で


どんなに嬉しかったことでしょう


いくつになっても成長できること


それもあなたに教わりました


これからもゆっくり大きくなってくださいね

恋文

生涯で一度だけ恋文を渡したことがあります。
もう30年以上も前のこと。
16歳年上の男性を好きになってしまいました。
散々あきらめようとしましたが、だめでした。
渡さないつもりで、心の赴くままに手紙を書きました。
彼には受け入れてもらえないことはわかっていましたから。
それでも私はどうしても気持ちを伝えたくなりました。
ふられることを百も承知で、手紙を渡すことを選びました。
それは、私が彼の生徒ではなくなった日。
卒業の日でした。
彼は手紙を読んでから一度会ってくれました。
お前が俺を避けるようになってたのは、わかってたけど、なぜかわからなかった。手紙を読んでお前の気持ちはよくわかった。
気持ちは嬉しいが、俺はお前の気持ちには答えられそうもない。
そう言って、彼はちゃんと私を失恋させてくれました。
その一年後、彼は同郷の幼馴染と結婚したと風の便りに聞きました。
あの手紙の内容はもう思い出せませんが、きっと今読んだら、顔から火が出そうなほど恥ずかしいのではないかと思います。
でも、後悔はしていません。
若くて無知で不器用で内気な私が、まっすぐに気持ちをぶつけることのできた最初で最後の人でした。
あの恋文は少しは彼の心をゆさぶったのでしょうか。
ほろ苦い思い出です。